新型コロナニュース 2020-05-24 18:06:28
【医師監修記事】「エアロゾル感染」ってなに?
本日(5月24日)、先月7日から出されていた緊急事態宣言の全面解除の方針が固められたことが報じられました。しかし、新型コロナウイルス感染が終息したわけではなく、今後も第2波などが来る可能性が高いと言われています。緊急事態宣言解除に伴って、今一度注意して行かなければならないことを感染症専門医の安間先生に伺いました。
前回までのコラム
第2回コラム:新型コロナウイルス感染症は抗体さえあれば大丈夫?
第1回コラム:新型コロナウイルス抗体検査は“使える”のか?
第2波は来るのでしょうか?
私たちひとりひとりの努力により、爆発的流行が危惧された新型コロナウイルスも一旦収束に向かいつつあります。これは、皆様が心を一つにして成し遂げた結果であり、素晴らしいことです。しかし残念ながら、個人的には第2波の到来を予感しており、まだまだ安心できない状況であると考えています。
2000年代初頭に現れたSARS(重症呼吸器症候群)のウィルスもコロナウイルスの仲間ですが、こちらは終息させることができました。しかし、新型コロナウィルスの場合は、感染が広がりやすい特徴(潜伏期が長い、集団感染を起こすなど)を持つこと、グローバル化によりウイルスがすでに世界中に広がってしまったことから、SARSと違って終息しない可能性が高いと思います。第二波が来るのがいつかは予想が難しいですが、風邪の原因となる他の弱いコロナウイルスが冬〜春先に流行しやすいこと1)を考えると、冬の時期の可能性が高いのではないでしょうか。
そのため、私たちはこれからも自分の身を守るべく、「新しい生活様式」を取り入れる必要があります。しかし、一口に新しい生活様式といってもイメージがつきにくいのではないでしょうか?
それを理解するためには、新型コロナウィルスがどのように人にうつるのかを知る必要があります。それは、飛沫感染、接触感染、エアロゾル感染の3つに分けて考えると良いです。今回は、皆様が聞きなれないであろう、エアロゾル感染について述べたいと思います。
エアロゾル感染とは?
「エアロゾル」とは、ざっくり言うと飛沫(しぶき)がさらに細かくなった液体の粒です。噴水の近くや加湿器のミストをイメージしてもらうと良いでしょう。
新型コロナウィルスに感染した人の息から、ウイルスを含んだこの粒が発生すると、密室内では3時間ほど空気中を漂うとされています2)。これを吸い込むことで感染するのが、エアロゾル感染です。
インフルエンザの場合ですが、エアロゾルを吸い込むと、少ないウイルス量で感染してしまう、つまりエアロゾルの方が感染しやすいという研究結果があります3)。
ライブハウス等での集団感染は、恐らくエアロゾル感染が主な原因ではないかと考えられます。人からエアロゾルが発生するのは、咳、くしゃみ、大声を出す、笑うなど、大きな呼吸を勢いよく行う場合です。通常の会話程度ではそれほど発生しないと考えられます。空気感染に似ていますが、大まかに言えば空気感染の方がより粒が細かく、厳密には違うものです(そもそもエアロゾル感染には現状で医学的な定義がありません)。
はしかは空気感染をする代表的な感染症ですが、強力な感染力を持ち、すれ違うだけでも感染すると言われています。新型コロナウィルスの場合は、ここまでの感染力はないと考えられます。ただし、前述のように密室では感染力が高まる可能性があり、注意が必要です。換気が推奨されているのはこれが理由です。また、人が多く集まる場所では、エアロゾルを出す行為を控える配慮も大切になってきます。
エアロゾルに対するマスクの効果ですが、残念ながら市販の不織布マスクや布マスクではエアロゾルの粒までは防げず、エアロゾル感染を防止することはできません。しかし、マスクをきちんと着けることは、エアロゾルの発生を抑える効果があると考えられます4)。そのため、公共の場では周囲へのエチケットとしてマスクの装着をお願いします。
<まとめ>
エアロゾル感染を防ぐためには以下の心掛けが大切です。
・大人数のいる密室を避ける
・こまめに換気をする
・公共の場では、マスクを着け、エアロゾルが発生する行為を控える
<出典>
1) J Clin Virol. 2018 Apr; 101: 52–56.
2) N Engl J Med. 2020 Apr 16;382(16):1564-1567.
3) Emerg Infect Dis. 2006 Nov; 12(11): 1657–1662.
4) Nat Med. 2020 May;26(5):676-680.
<記事寄稿>
安間 章裕
感染症専門医
H22年3月 浜松医科大学医学部卒業
H24年3月 磐田市立総合病院初期臨床研修修了
H24年4月〜H30年3月 亀田総合病院で総合診療医・感染症医として研鑽を積む
その後、在宅医療等の経験を経て、現在、地元静岡県内の基幹病院に勤務
日本内科学会総合内科専門医、日本感染症学会認定専門医