新型コロナニュース 2020-05-06 23:54:40

【医師監修記事】新型コロナウイルスの抗体検査は”使える”のか?

少し前から、TVなどメディアでも「抗体検査」という言葉を目にする機会が増えました。米国や欧州では実際に市民を対象に検査が行われており、今後日本でも行われる可能性があります。今回は、抗体検査とはどんなもので、どんな意味があるのかについてお話させて頂きます(202056日現在の情報に基づく)

 

ヒトの免疫作用にはいくつか種類がありますが、大きく分けると、以下の2つに分かれます。

 

①兵隊(白血球)が直接外敵を食べる、

②兵隊(白血球)が弓矢のような武器を用いて外敵を倒す、

 

この②で使われる武器は、敵ごとによってカスタマイズされたものになります。この武器がいわば抗体です。武器はまず敵を研究してから作られますので、抗体ができるには敵が体内に侵入してから時間がかかります。

 

抗体はタンパク質でできており、いくつか種類があります。代表的なのがIgMIgGと呼ばれるタンパク質です。通常、感染(症状があってもなくても)して数日後からIgMが増え始め、少し遅れてIgGが増えます。その後、IgMは減りますが、IgGは長期間残る、というパターンが一般的です。

 

国立感染症研究所が行なった調査1)では、新型コロナウィルスにかかった患者さんの血液で抗体検査をしたところ、発症1週間以内では7.1%しか陽性になりませんでした。その後、徐々に陽性率が上がり、13日以降では96.9%で陽性になりました。また、PCR検査がウィルスの存在を直接調べる(生きているか死んでるか問わず)のと異なり、抗体検査はウィルスが体内に侵入した形跡(武器が作られたかどうか)を間接的に見ている検査になります。

 

これらから、抗体検査は感染から時間が経たないと検査で陽性にならず、陽性になったとしてもそれが現在の感染を必ずしも意味しないといったことから、新型コロナウィルス感染症の診断、つまり今かかっているかどうかの判断には使いにくい、ということになります。

 

また、現時点で多数の会社から抗体検査キットが販売されていますが2)、方法にもいくつか種類があり、検査の精度に関しても未だ不明な点が多いというのが実情です。

 

<まとめ>

抗体検査とは、今かかっているかどうかの診断には使いにくく、まだ分かっていない新型コロナウィルスの詳しい性質(例えば、実際にかかった人は何人で、正しい死亡率は何%なのかなど)を調べるための疫学調査には使える、ということになるかと思います。

 

次回は、「抗体さえできたらもうかからないのか?」についてお話しようと思います。

 

出典:

1)https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/9520-covid19-16.html

2)https://www.centerforhealthsecurity.org/resources/COVID-19/serology/Serology-based-tests-for-COVID-19.html

 

 

安間 章裕
感染症専門医
H22年3月 浜松医科大学医学部卒業
H24年3月 磐田市立総合病院初期臨床研修修了
H24年4月〜H30年3月 亀田総合病院で総合診療医・感染症医として研鑽を積む
その後、在宅医療等の経験を経て、現在、地元静岡県内の基幹病院に勤務
日本内科学会総合内科専門医、日本感染症学会認定専門医