新型コロナニュース 2020-06-03 00:08:27

【医師監修記事】「新しい生活様式」ってどうしたらいいの?

新型コロナウィルスの感染者数は、一旦大きく減少したものの、北九州市でのクラスター発生や院内感染などが続き、下がり止まってしまっています。

 

恐らくはこの状況が今後も続き、第2波につながる可能性が高いのではないかと思っています。そのため、非常事態宣言は解除されたものの、感染拡大を防ぐためには私たち全員が「新しい生活様式」を続けていくことが非常に大切になってきます。

 

前回の記事で、「新しい生活様式」を取り入れるには、新型コロナウィルスがどのように人にうつるのかを知る必要があること、そしてそれは、①飛沫感染、②エアロゾル感染、③接触感染の3つに分けて考えると良いことをお話させて頂きました。今回は、飛沫感染、接触感染について解説します。なお、エアロゾル感染につきましては前回までの記事をご参照下さい。

 

第3回コラム:エアゾル感染ってなに?
第2回コラム:新型コロナウイルス感染症は抗体さえあれば大丈夫?
1回コラム:新型コロナウイルス抗体検査は使えるのか?

 

-①飛沫感染

飛沫というのは、私たちが会話をしたり、咳やくしゃみをした時に出る、唾液の「しぶき」のことです。くしゃみをしたときには、およそ4万個の飛沫が発生するそうです1)。感染した人の唾液にはウィルスが含まれています。この飛沫が直接、口や鼻、眼に入るとそこからウィルスが体内に侵入し、感染してしまいます。

 

この飛沫は約2mの飛距離があることが分かっています1)。なるべく2mの距離を空けるようにと言われているのは、この飛沫を避けるためなのです。マスクはこの飛沫が口、鼻に侵入することを防ぐ効果があり、感染のリスクを下げることができます2)

 

また、マスクをするとこの飛沫の発生をほぼゼロに抑えることができます3)。新型コロナウィルスは無症状であっても他の人に感染させてしまうことがあり得るため、エチケットとしてもマスクを着けることが大切です。

 

ただし食事の際はどうしてもマスクを着けられないため、食事中は会話を控えるか、距離を空けるかしなくてはなりません。

 

眼は隠さなくてよいのか?という疑問があるかも知れません。理論的には先ほどのように、マスクを着けることで飛沫はほぼゼロになりますので、相手がマスクさえしていれば、眼から感染する可能性はかなり低いと言えます。実際に医療機関向けの指針でも、感染患者さんがマスクをしていれば、眼を保護していなくても医療従事者の感染リスクは低いとされています4)

 

-②接触感染

接触感染はいくつかの段階から成り立ちます。まず、感染者の唾液から直接、もしくは感染者の手を介して、周りの物にウィルスが付着します。感染していない人がそれを触ることで手にウィルスが付きます。その汚染された手が口や鼻に触れることでウィルスが体内に侵入し、感染してしまいます。

新型コロナウィルスの場合、飛沫感染やエアロゾル感染の方が主な感染経路と言われていますが5)、接触感染にも注意が必要です。

 

なぜなら新型コロナウィルスは物の表面で長く生きている可能性があるからです。特に、プラスチックやステンレスの表面では3日間生き残るという研究結果があります6)。また、感染者の部屋の寝具、浴室のドアノブ、電気スイッチ、タオル、トイレ周辺、机、電話機、リモコンなどからウィルスが検出されたという報告があります7)8)

 

対策としては、まず手にウィルスが付かないように公共スペースではなるべく物に手を触れないこと、利用する場合は周りを消毒すること、あとは手に付いたウィルスが体内に入らないようにこまめに手洗いをすることです。

 

アルコールがなかなか手に入りにくいですが、市販の石鹸でも効果があります9)

ベンザルコニウム、クロルヘキシジンという消毒薬では効果が弱い可能性があるので注意しましょう10)

 

新しい生活様式を取り入れることには、不便を感じることもあるでしょう。しかし、私たちの周りには新型コロナウィルスだけではなく、インフルエンザや耐性菌など凶悪な病原体が色々潜んでいます。新しい生活様式を取り入れることで、これらの病原体からも身を守ることができます。

「新しい生活様式」とは、マニュアルに従った行動をする、ということではなく、ひとりひとりがこのように「感染症」に対する意識を持つ、という一種の価値観であるのではないかと個人的には思います。

 

 

<まとめ>

〜飛沫感染、接触感染を防ぐには〜

・人と接する時や公共の場ではマスクを着ける

・食事中は会話を控える

・公共スペースではなるべく物に触れず、周りを消毒する

・こまめに手洗いする

 

 

<出典>

1)https://www.who.int/water_sanitation_health/publications/natural_ventilation.pdf(2020/6/2時点)
2)https://www.idsociety.org/COVID19guidelines/ip(2020/6/2時点)
3)Nat Med. 2020 May;26(5):676-680.
4)https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/guidance-risk-assesment-hcp.html(2020/6/2時点)
5)https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/prevent-getting-sick/how-covid-spreads.html(2020/6/2時点)
6)N Engl J Med. 2020 Apr 16;382(16):1564-1567.
7)https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9597-covid19-19.html
8)https://doi.org/10.3201/eid2609.201435
9)https://www.kitasato-u.ac.jp/jp/news/20200417-03.html
10)J Hosp Infect. 2020 Mar;104(3):246-251.

 

<記事寄稿>
安間 章裕
感染症専門医
H22年3月 浜松医科大学医学部卒業
H24年3月 磐田市立総合病院初期臨床研修修了
H24年4月〜H30年3月 亀田総合病院で総合診療医・感染症医として研鑽を積む
その後、在宅医療等の経験を経て、現在、地元静岡県内の基幹病院に勤務
日本内科学会総合内科専門医、日本感染症学会認定専門医